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障害福祉人材確保・職場環境改善等事業費補助金の実績報告

さて、年度はじめに障害福祉人材確保・職場環境改善等事業費補助金の申請をした事業所については、そろそろ実績報告の準備が必要です。 ただ、この補助金の実績報告期限については、都道府県によって期限が異なるようです。 神奈川県は8月末、愛知県は11月末、岐阜県は令和8年1月ごろ、静岡県や島根県はまだわかりません。 ※静岡県は8月20日とのこと 実績報告に関しては、基準月として申請した月から実績報告期限の月までに支払った費用が対象になることから、都道府県によって期間がこれだけ異なるとなんだか不公平な気はします。 人件費に充てる場合は、ベースアップに充てることは基本的には想定されないため、別途一時金として支給するケースが多いだろうと思われ、パンフレットでは例によって1人54,000円というような目安の金額が示されてしまっており、なかなか困るなという印象です。 今までにこの補助金に関するQ&Aは2回出ていますが、2回目のQ&Aが1回目の分も網羅していますので、こちらを参照すると良いです。 https://www.mhlw.go.jp/content/001490716.pdf よくあるご相談としましては、 ①計画申請時に人件費の方にだけ⚪︎を打ちましたが経費にも充てられますか? ②どんな経費が対象になりますか? といった内容になります。 Q&Aを見ると、①については気にすることなく、人件費と経費、両方に充てたりと、変更してもよいと読み取れます。 問題は②で、これもQ&Aを参考にすると、案外対象になる経費の範囲が限定されていて難しいです。 この補助金は、処遇改善加算制度の職場環境要件について、令和7年度から急に要件が厳しくなって、各項目2つ以上、生産性の項目は3以上(うち課題の見える化は必須)を満たす必要が生じたことから、これらの要件を満たすための取り組みに対して補助されるものになります。 そのため、職場環境要件を理解することから始めると、対象になる取り組みの費用が分かってきます。 基本的にハードは対象外なので、組織コンサル、人材コンサル、研修、会議、講演、セミナーなどが充てやすいのかなと思いますし、事務部門など間接部門を増強するために使った求人費用などは対象になるかなと思います。 最後にもう一度申し上げたいのですが、都道府県によってこれだけ実績報告...

企業主導型保育事業の年度完了報告、消費税仕入控除税額報告および専門的財務監査の傾向等

 平成28年から制度が始まってあっという間に10年近く経過してきましたが、この10年で日本の保育・幼児教育分野の環境はかなり変化があったと感じます。  地域差もありますが、認可保育所や幼稚園が認定こども園化していく流れは続いており、コロナの影響もありますが、出生数減少に伴い、年度はじめの0歳児受け入れ人数が顕著に減ってきている地域もありますし、相変わらずの勢いで、年度当初から満員でキャンセル待ちが大勢という保育所もあります。  こうした環境下で、企業主導型保育事業もそれなりにバラエティに富んでおり、非常に人気があって常に満員になる園もあります。  保育業界の将来展望の話は別の機会にして、今日は令和6年度の企業主導型保育事業の年度完了報告や令和5年度の消費税仕入控除税額報告、また5年に1回程度の頻度で行われている専門的財務監査に関して、雑感を書いてみたいと思います。  まず企業主導型保育事業の年度完了報告の傾向ですが、毎年繰り返してきて、平成28年度から数えると令和6年度報告で9回目になりますが、ピムスでの報告にもだんだんと慣れてきているものの、毎年少しずつルールが変わっていますので、よくよく考えて運営をし、会計処理をしないといけません。  特に業務委託費、雑費、手数料などの勘定科目については、きちんと内容を精査し、根拠となる契約書類、またその契約にいたった経緯なども証跡を残しておく必要があります。  社会福祉法人であればこのあたりは普段から慣れ親しんでいる訳ですが、その他の法人格の企業については、なじみが薄い部分です。  業務委託費については、あらかじめチェックリストに詳細を記述しなければならない等、なかなか大変になりました。  企業主導型保育事業の会計に関する独特の処理といたしましては、本部人件費、法人税の按分計上、各種専門家(税理士、社労士、弁護士等)の顧問料の按分計上、資産の購入支出の計上、積立金の計上・取り崩し、雑収入等の実費収入等に対応する経費のマイナス調整(職員から控除する給食費の調整他)、自治体からの補助金を充てた費用のマイナス調整など、社会福祉法人の会計に似ているもののちょっと独特な取扱いもあったりと、会計の専門家でも苦慮するケースがあります。  また、部門別会計をして保育園のみの採算を見るのは当たり前なのですが、部門別の貸借対照表の作成まではできな...

障害福祉サービスの報酬適正化に関する考察

ここにきて財務省が障害福祉サービスの報酬の適正化について、指摘をしています。 「 財務省、障害福祉サービスの構造問題を提起 」 障害福祉サービスについては、マニアックなサービスで、全容がよく分からないという風潮があるかなと思いますが、実はよく考えて制度設計されております。 その中でも、ローカルルール、独特の加算制度の要件など、勉強熱心な方々からすれば、いくらでも改善の余地が見出せる状況のなか、いよいよ財務省も動きを強めています。 相対的にみれば、障害福祉サービスの予算の伸び率は顕著であり、なぜこうなっているのかという観点で、国は財務情報、収支差率のデータ収集からスタートしている訳です。 こうしたせめぎ合いについては、当たり前の事ではありますが、障害福祉サービスだけでなく、保育サービスの地域型保育事業の収支差率についても言及されており、誤解をおそれずにいえば、儲かっている事業はこれで、ここは予算を抑制して、全体のバランスをとりながら、基本的には抑えていくんだということが、国の予算設計の趣旨だと思います。 具体的な言及は差し控えますが、時すでに遅しではございますが、明らかに指摘されることに関していえば、やはり就労系サービスの就労移行支援体制加算や施設外就労、在宅支援サービスに関連する一連の制度に関することでしょう。 この加算制度等については、法律・基準は守っておりますが、とんでもない利益を叩き出していますという企業が複数存在することは事実であり、 令和7年3月31日付のQ&A を見ても、国の方は急いでルールを作ろうとしている思惑が見てとれます。 いつの世もいわゆるイタチごっこはある訳で、こうした制度に詳しいとバレますと、私どもには問い合わせが殺到する訳であります。 が、適正かつ適切、そして法令遵守をもとにして、ご利用者を最優先する考え方こそ、最も重要であると私は思います。 今の時代はAIが台頭し、ChatGPTに聞いてからコンサルに聞けば良いという方法が一番合理的で、そのうち私どもも事業に苦労する時代が訪れると思いますが、障害福祉サービスのフロンティアもそろそろ見えなくなると思われます。 私どもはいよいよ最新医療と地域福祉に目線を移して、実はすでに活動している訳でありますが、これもまたもって3年でしょう。 日本の医療福祉はまさに戦国時代だなと常々思います。

企業主導型保育事業のM&A(事業譲渡)について

令和6年度はここ最近で初めて、全国の保育施設数が減少に転じた年度でした。 今後、保育業界はどうなっていくのか、コロナの影響による子どもの出生数の減少の影響が大きく出ている地域もありますが、やはりM&Aや事業譲渡の案件が増えてくると考えられます。 その中で、企業主導型保育事業については、平成28年度に始まった事業ではありますが、毎年2回ほど不定期で行われる財産処分手続きにおける事業譲渡の手続きにて、実際に譲渡されるケースがあります。 弊社は毎年2、3件ほど事業譲渡を手掛けておりますが、国の補助事業として整備されている認可外保育施設ですので、特に 財産処分手続 については熟知しておく必要があります。 売主の気持ちはわかるのですが、いろいろ考え方もあるとは思いますが、補助事業である以上は、その場所で一定の役割を果たすことを期待されて補助されている訳であり、基本的に高く売るような事業ではないので、この 財産処分手続 についての理解をしておかないといけません。 弊社が今まで取り組んできたケースはだいたい以下のとおりですが、すべて無償譲渡ばかりです。 ① グループ再編によるグループ内での移管をするための事業譲渡 ② 本業に専念するための事業譲渡 ③ 採算が確保できないため経験のある企業への事業譲渡 やはりその地域の子どもとご家族のためにどうするのか、という視点が重要で、それを支えることができる企業が企業主導型保育事業を行うということが、大原則ではないかと考えます。

障害福祉人材確保・職場環境改善等事業補助金について

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令和7年度の処遇改善計画書の作成真っただ中の事業所も多いと思いますが、今回、この処遇改善計画書とともに、タイトルの「障害福祉人材確保・職場環境改善等事業補助金」の申請も併せて行う法人が多いと思います。 令和6年度までは、介護保険サービスと障害福祉サービスとで「職場環境等要件」を満たしている項目数の必要数に差がありましたが、令和7年度からは同等になりますね。 特に6項目のうち「生産性向上のための取組」の項目については、必須項目が存在すること(介護保険サービスと障害福祉サービスとで微妙に異なります)や、この項目だけ3以上の取組が必要になることなど、注意が必要です。 今回、令和7年度の処遇改善計画書を作成するにあたって、この職場環境等要件を満たせず、処遇改善加算ⅠやⅡが算定できなくてⅢやⅣに落ちてしまう事業所が続出するのではないかと心配しておりましたが、タイトルの「障害福祉人材確保・職場環境改善等事業補助金」を申請することによって、令和7年度中の職場環境等要件の適用が猶予されるようです。 1年間かけて、職場環境等要件についての取組を行うことができますので、その点は一安心です。 とにかく現場の課題の見える化だけは必ず取り組んでいくとよいですね。

パブリックコメントに対する考え方(「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に伴う関係告示の一部改正等」に対して寄せられたご意見について)

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さて、障害福祉サービスの2024年度報酬改定に関するパブリックコメントの結果が発表されました。 結果の公示について(者) 結果の公示について(児) 弊社からの意見についても考え方が示されておりますので、一部ご紹介したいと思います。 ①居宅介護 特定事業所加算の要件について、当初の情報では、障害児への訪問実績が一件でもないといけないかのように読める部分があったため、最新資料で読むと障害児への訪問実績は必要ないと考えてよいか、念のための確認のために意見を申し入れたところ、ご意見のとおりとのことでした。 そのため、居宅介護で特定事業所加算を算定している事業所さまについては、安心していただいてよいかなと思います。 ②計画相談支援・障害児相談支援 計画相談支援・障害児相談支援の事業所同士が連携して機能強化する場合の要件として、どのような研修が該当するのか確認した意見になります。 現段階で100%回答ではありませんが、協議会については、障害者総合支援法第89条の3第1項に規定する協議会を指しているとの回答は得られました。 ちなみに障害者総合支援法第89条の3第1項はこのような文章になります。 「 (協議会の設置) 第八十九条の三  地方公共団体は、単独で又は共同して、障害者等への支援の体制の整備を図るため、関係機関、関係団体並びに障害者等及びその家族並びに障害者等の福祉、医療、教育又は雇用に関連する職務に従事する者その他の関係者(次項において「関係機関等」という。)により構成される協議会を置くように努めなければならない。」 参加している協議会がこの協議会に該当するかどうかは、各市町村に確認するようにとのことです。 また、親会だけでなく、専門部会も該当するとのことですので、広く認められるようで良かったと思います。 ただし、これ以上の詳細については、別途通知となりました。 ③就労継続支援A型 今回は特に就労継続支援A型の改定内容については、反対意見がとても多かったと思います。 弊社からの意見と同様の意見が15件もあったようです。 しかし考え方としての回答内容については、一歩も譲る部分はございませんので、いよいよ就労継続支援A型事業所における大量解雇、事業所廃止が進んでしまうと思われます。 弊社としましては、一般企業における障害者雇用との違いがよく分からなくなったと思いますし、法定雇...

2024年度 処遇改善加算の改定について(介護職員処遇改善加算、福祉・介護職員処遇改善加算)

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さて、介護保険サービス、障害福祉サービスの2024年度報酬改定の公開情報がそろってきました。 基本報酬を上げるとの話でしたが、蓋を開けてみれば、基本報酬が下がっているサービスもありました。 しかし、処遇改善加算の加算率については、総じて増額となる内容です。 良い機会ですので、資料をもとに、改定前と改定後の比較をしてみたいと思います。 2024年度 介護職員処遇改善加算 ※「介護給付費分科会」ウェブサイトより 2023年度 介護職員処遇改善加算の状況 ※ 「介護職員処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」より 比較してみると、訪問介護などかなり大きく上がっているように見えますが、処遇改善加算の一本化によって、比較しづらくなっていますので要注意です。 念のためひもといてみると、 ⚫︎訪問介護 2023年度 → 2024年度  13.7%+6.3%+2.4%=22.4% → 24.5% (2.1%増) ⚫︎通所介護 2023年度 → 2024年度  5.9%+1.2%+1.1%=8.2%→ 9.2%(1.0%増)  ※ 処遇改善加算Ⅰ、特定処遇改善加算Ⅰ、ベースアップ等支援加算を算定している場合 そのほか、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護など、認知症系サービスは他より少し上がっている印象です。 はっきり申し上げて基本報酬や加算等の収入シミュレーションをする際、最後にしっかり処遇改善加算のシミュレーションもしないと、今回の報酬改定の内容を見誤ることになると思います。 次に障害福祉サービスも見てみましょう。 2024年度 福祉・介護職員処遇改善加算 ※ 「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」ウェブサイトより 2023年度 福祉・介護職員処遇改善加算の状況 ※「福祉・介護職員処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」より 障害福祉分野にいたっては、訪問系サービスがとんでもない上昇率に見えますが、これもひもときましょう。 ⚫︎居宅介護 2023年度 → 2024年度  27.4%+7.0%+3.5%=38.9%→ 41.7%(2.8%増) 障害福祉サービスは、少し他のサービスもひもといてみます。 ⚫︎放課後等デイサービス 2023年度 → 2024年度  8.4%+1.3%+2.0%=11....