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8月, 2017の投稿を表示しています

就労継続支援A型事業の問題を考える

このところ、全国各地で就労継続支援A型事業所の廃止や大量解雇が問題になってきておりますが、そもそもなぜこのようなことが起きるのか考えています。 制度設計の問題であるといえばそれまでなのですが、いろいろな機関の仕事の進め方にも原因があるように思います。 誰が悪いとかそういうお話ではなく、制度設計そのものの問題を考えたいと思います。 まず、就労継続支援A型事業所の指定許可を得ようとする場合、社会福祉法人なら社会福祉事業を展開する法人なので、定款の規定に特殊な制限は無く、該当する事業が規定されていれば理事会承認、評議員会承認を得て、管轄の指定許可を得られれば開業して良いのですが、株式会社などの営利法人である場合は、定款の事業目的に障害福祉サービス以外の事業を規定してはいけないという自治体があります。 というかほとんどそうかとは思います。 全国統一ルールなのかよく分からない点も問題ですが、営利法人にのみこの縛りがあるために、既存の事業を経営している母体法人とは別に新しく法人を設立しなければ就労継続支援A型事業所を開業できず、結果として就労継続支援A型事業所のみを運営する営利法人が次から次へとできてしまいました。 当然、新規法人は財務体質が強くないですので、就労収益を上げようと思っても設備投資が難しく、収入や収益を増やすことも難しくなると思います。 仮に母体の法人から仕事を受注するにしても、やはり仕事内容に見合った金額でしか契約できないのが本来の形ですので、簡単に母体法人の仕事を回す訳にもいきません。 利害関係者、特に株主がしっかりしている母体法人でしたら、到底無理ですね。 ただ、こうした母体の法人は、法定雇用率の確保で悩んでいるようなケースもあります。 グループ会社である就労継続支援A型事業所でたくさんの障害者を雇用したとしても、母体法人の法定雇用率にはカウントできませんので、母体法人の規模にもよりますが、一方で障害者雇用納付金を収め、就労継続支援A型事業所では訓練等給付費を受けるというなんだかよく分からない状態が生しまれます。 就労継続支援事業を開業するのではなく、直接雇用しなさいと言われればそれまでですが、直接雇用するにしても訓練や実習を受けてからでないとなかなか難しいでしょうし、障害者雇用についてもっと深く知るために就労継続支援A型事業を開業し

平成30年度介護報酬改定に向けての訪問介護の動向

いよいよ平成30年4月の医療・介護報酬同時改定が迫ってきています。(障害福祉サービスも改定があるので福祉サービス事業者にとっては節目ですね。) この報酬改定に向けて分科会で協議が行われていますが、今日は特に訪問介護の資料についてじっくり読み込んでみたいと思います。 ● 第142回 社会保障審議会 介護給付費分科会資料 訪問介護及び訪問入浴介護 まず7ページを見てみると、事業所数は増加の一途をたどっていますが、1事業所あたりの利用者数は若干減っています。 また14ページを見てみると、平成27年度以降は20分未満の身体介護中心型サービスが大きく増加してきており、平成27年度報酬改定の際の見直しの影響と住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の増加を感じさせる推移になっています。 そして30ページの内容を見ると、平成27年度報酬改定の影響で同一建物減算の算定事業所の割合がどっと増えたことが分かります。 この同一建物減算の話を中心に読み込んでみると、44~46ページの大阪府の実態調査結果の内容から、質の高いサービスが行われていない場合や必要以上のサービスが提供されている場合は基本報酬の減算措置も含めた介護報酬の適正化図ることを検討している様子が分かります。 住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅と訪問介護との区分については、人員配置の区分、会計の区分など全国各地で混乱も見られますが、こうした運営方法をしている事業者にとっては今度の30年度報酬改定は厳しい内容になる可能性があります。 以前にとある調査に立ち会ったことがあるのですが、なぜ特定施設入居者生活介護の指定を取らないのかと聞かれたことがあります。 まあ公募事業なので指定許可を得ることができないんですという思いだったのですが、特定施設が総量規制されていると余計に有料やサ高住を建てるしかないということになりますので、いっそのこと特定施設はもう少し指定を取りやすくしてもらえたらよかったのになあと思うこともあります。が、なかなか難しいんでしょうね。。 あと資料は40ページに戻ってしまうのですが、生活援助の見直しも検討されているようで、身体介護は訪問介護員が行い、生活援助は高齢のボランティアが行えるようにするなど、人員配置基準を緩和してはどうかという議論もなされているよう

就労継続支援A型事業所の大量解雇問題

先日、 岡山県倉敷市の就労継続支援A型事業所が職員と利用者合わせて約220名を一斉に解雇し、5ヶ所もの事業所を廃止したというニュース を見ましたが、いよいよとんでもないことが起きたなあとびっくりしました。 この法人は一般社団法人あじさいの輪という法人とそのグループ会社とのことで、なんと 香川県高松市でも同じように59人も解雇して事業所を廃止 したようです。 この就労継続支援A型事業は大変な事業であり、福祉サービスもビジネスも両立させて成功させなければなりません。 訓練等給付費の他に特開金( 特定求職者雇用開発助成金 )の受給ができるケースがあるので、この助成金を予算に入れてしまっていた事業所が多かったと思いますが、助成金はあくまでも助成金ですので、本来は営業という観点から考えれば予算に見込んではいけないかと考えます。 社会福祉法人であれば補正予算の度に理事会を開催するのも大変なので、資金収支予算には含めるかと思いますが、就労収益になるものではないので、しっかりと就労会計の黒字予算を立てるために生産活動の計画を練って行動に落とし込まないといけません。 ただ、就労継続支援A型事業はどこまでいっても福祉サービスですし、就労の訓練の場でもあるので、訓練の場で毎年営業利益ベースで黒字を出すというこの構造自体にかなり難しさがあるように思います。 就労継続支援A型事業所への指導は年々厳しくなってきており、今年度からは就労収益から払った1時間あたり利用者賃金を算出し、水準に達していない事業所は経営改善計画を提出しなければならない自治体が出てきました。 ただ、毎年このような指導をして毎年経営改善しなさいと指導されても、ビジネスでの成功は難しいと思いますので、全国各地で混乱も起きそうで心配しております。 結局は助成金目的で参入したような事業所は淘汰され、優良な事業所のみか生き残って行くのかとも考えられますが、当分厳しい状況が続くだろうと予想されます。 こうした状況の中、平成30年度報酬改定はどうなるのか気になるところです。 新しく就労定着支援サービスができること、就労継続支援A型は総量規制の対象になるであろうことなど、障害福祉サービスの就労系サービスの動向にも注目したいところです。 それと並行し、企業の法定雇用率の問題や地域共生サービスの誕生(今のところ就労系は対

平成29年度企業主導型保育事業助成金第二次募集が始まります

今日の 閣議後の松山少子化相の記者会見 で、企業主導型保育事業の目標定員数を2万人上積みして当初の5万人から7万人とすることが発表されましたが、今日の夜になって児童育成協会のホームページで 平成29年度の第二次募集の募集期間が発表 されました。 当初の予定では7月末か8月末というお話でしたが、結局9月29日の17時30分までということですので、今月末を目標として準備していた企業にとっては少し余裕が出たかと思います。 が、定員が達成されたらおしまいという考え方かと思うので、申請は早いにこしたことはないですね。 もちろんしっかりとした計画内容で申請すべきですが。 募集の詳細は こちら で案内がされています。 しかし平成29年度事業なので、平成30年3月末までに工事完了、引き渡し、支払完了ということですと、かなりタイトですね。 ひょっとして平成30年度も募集があるかもしれませんが、あまり期待してもいけませんので、納期を考えますと事前着工やむなしというケースもあるかもしれませんね。 こうした助成事業で事前着工が可能というのも非常に珍しく、リスクも高いと思いますが、28年度と29年度をまたいだ事業はしっかりと分けて申請していた様子ですので、来年度のことが分からない中、9月末に申請して11月末や12月初旬まで助成決定を待ってそれから着工するというのは、テナント改装でないと厳しいように思います。 医療、介護ともに平成30年度報酬改定が控えていますが、児童福祉もこの平成30年度は節目の年かと思うので、どうなっていくのか注視していきたいです。 とにかく、今月も来月も保育関係のお仕事が増えそうです。

NPO法人が障害福祉サービスを運営する場合の法人税

ようやく国税庁のホームページにしっかりと照会及び回答が公表されたので、説得力のある説明ができるようになりました。 NPO法人というとボランティアだとか非営利だとかそういったイメージがある方が多いようで、中には利益を出してはいけないという方もいらっしゃいますが、そういった中で非営利なんだから法人税はかからないというようなびっくりする解釈をしている法人もまだあるようです。 実際、障害福祉サービスはNPO法人が運営している場合でも普通に法人税が課税されるのですが、今回その取扱いを国税庁がしっかり照会に対する回答という形で公表してくれました。 「NPO法人が障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う場合の法人税の納税義務について」 まあ、障害福祉サービスが法人税非課税となるのは社会福祉法人ぐらいではないでしょうか。。。 社会福祉法人は医療保健業も法人税非課税ですので、病院や診療所、歯科診療所も法人税非課税となります。 まあ、医療法人を持っていると社会福祉法人で診療所の開設はなかなかさせてもらえないですが。。 ちなみに日本最大の社会福祉法人は 済生会 で、年間収入総額が6,000億円を超えますが、医療保健業は法人税非課税であり、補助金や積立金、退職引当金なんかもとてつもなくあります。 話が逸れてしまいましたが、とにかくNPO法人の障害福祉サービスは法人税が普通にかかりますので注意が必要かと思います。

平成29年度企業主導型保育の二次募集申請

企業主導型保育事業は平成28年度と平成29年度の二年間募集が行なわれ、この間に助成決定を受けた園はその後も毎年運営費の申請と完了報告をすることになるかと思います。 平成29年度の第二次募集は7月末か8月末までの申請になると発表されていたのですが、今のところまだ第二次募集期間は決定していないようですね。 児童育成協会のポータルサイトのお知らせにまだ準備中ということで お知らせがアップされています。 前回の第一次募集で相当数の応募があったのではないかと推測されますので、なかなか第二次募集が始められないのかもしれませんが、遅れれば遅れるほど応募されたい企業が増える状況にあるのではないかとも感じております。 ただ、既に複数の園の指導監査に立ち会いましたが、運営に関しては相当しっかりと取り組まないといけません。 特に食事と衛生面、午睡時の処遇など、取り組むことは盛りだくさんです。 大切な児童をお預かりするので当たり前なのですが、スタートしてからが大事だと思いますので、準備段階でしっかり研修をしておくべきだと感じます。 また、特に保育の会計に関しては、社会福祉法人等の実務が分かっていないと理解が難しいものもありますので、今後も会計事務所さまからのご相談が増えそうです。 部門別会計は必須であり、貸借対照表もしっかりと部門別に整理され、保育に関係のない支出はしてはいけないことなど、社会福祉法人なら当たり前のことなのですが、企業会計に急にこれを取り入れることは非常に大変です。 保育園の通帳は必ず分けていただくようにしているのですが、その方が良いですね。 でないと本業の会計と混ざってしまい、部門間の繰入・繰出、借入・貸付処理が後からではどうにもならなくなっていきます。 特に、繰入で処理してしまうと基本的には寄附したことと同義になってしまいますので、返ってこないですね。 貸付処理しておかないと。 当然、預金振替の根拠となる伺書や調書なども残しておき、出納職員、会計責任者の捺印も受領しておくべきだと思います。 そこまで言われないかもしれませんが、しっかり根拠を残しておかないと大変なことになるでしょうね。。 一部では、助成金の高さから黒字になる、利益が出るという考えを持った方もいらっしゃるようですが、助成金なので余ったら返還ですし、余った場合は将来への積立を行っ