2024年度 処遇改善加算の改定について(介護職員処遇改善加算、福祉・介護職員処遇改善加算)

さて、介護保険サービス、障害福祉サービスの2024年度報酬改定の公開情報がそろってきました。

基本報酬を上げるとの話でしたが、蓋を開けてみれば、基本報酬が下がっているサービスもありました。

しかし、処遇改善加算の加算率については、総じて増額となる内容です。

良い機会ですので、資料をもとに、改定前と改定後の比較をしてみたいと思います。


2024年度 介護職員処遇改善加算


※「介護給付費分科会」ウェブサイトより


2023年度 介護職員処遇改善加算の状況

※ 「介護職員処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」より




比較してみると、訪問介護などかなり大きく上がっているように見えますが、処遇改善加算の一本化によって、比較しづらくなっていますので要注意です。

念のためひもといてみると、

⚫︎訪問介護 2023年度 → 2024年度
 13.7%+6.3%+2.4%=22.4% → 24.5% (2.1%増)

⚫︎通所介護 2023年度 → 2024年度
 5.9%+1.2%+1.1%=8.2%→ 9.2%(1.0%増)

 ※ 処遇改善加算Ⅰ、特定処遇改善加算Ⅰ、ベースアップ等支援加算を算定している場合

そのほか、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護など、認知症系サービスは他より少し上がっている印象です。

はっきり申し上げて基本報酬や加算等の収入シミュレーションをする際、最後にしっかり処遇改善加算のシミュレーションもしないと、今回の報酬改定の内容を見誤ることになると思います。

次に障害福祉サービスも見てみましょう。


2024年度 福祉・介護職員処遇改善加算


※ 「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」ウェブサイトより



2023年度 福祉・介護職員処遇改善加算の状況


※「福祉・介護職員処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」より




障害福祉分野にいたっては、訪問系サービスがとんでもない上昇率に見えますが、これもひもときましょう。

⚫︎居宅介護 2023年度 → 2024年度
 27.4%+7.0%+3.5%=38.9%→ 41.7%(2.8%増)

障害福祉サービスは、少し他のサービスもひもといてみます。

⚫︎放課後等デイサービス 2023年度 → 2024年度
 8.4%+1.3%+2.0%=11.7% → 13.4% (1.7%増)

⚫︎就労継続支援B型 2023年度 → 2024年度
 5.4%+1.7%+1.3%=8.4%→ 9.3%(0.9%増)

⚫︎共同生活援助 2023年度 → 2024年度
 8.6%+1.9%+2.6%=13.1%→ 14.7%(1.6%増)

※ 全て処遇改善加算Ⅰ、特定処遇改善加算Ⅰ、ベースアップ等支援加算を算定している前提でシミュレーションをしています。また、共同生活援助は介護包括型の数値です。



介護保険サービスも障害福祉サービスも、総じて1%〜2%は処遇改善加算率が上昇しています。

1事業所あたりで考えると、事業規模や届出状況にもよりますが、毎月3万円から5万円ほど増え、それを職員のみんなにさらに分配する感覚でしょうか。

また、その他の問題としましては、相談系サービス等、処遇改善加算制度の対象外とされているサービスがあり、はっきり言ってそれが実情にそぐわない状況です。

ケアマネジャー、看護職員、相談支援専門員に処遇改善加算を充てることができないため、こうした人材の確保が難しくなってしまっています。

そのような人材の処遇改善については、基本報酬の増額改定で対応していると書かれてはいますが、事業所にそのような余裕が出るほどの基本報酬の増額改定かと言われると、なんともいえない単価ではあり、収入の状況によっては基本報酬の増額の金額がほんの少ししかない事業所もあるでしょうし、十分な制度設計とはいえないように感じます。

平成21年ごろのケアマネ協会とのやりとりにおいて、ケアマネジャーは処遇改善交付金(当時は加算ではなかった)はいらないと辞退したというような噂話は聞いており、それが15年経過した今でも尾を引いているのかと思いますと、やるせない気持ちです。

とにかく、この2024年度処遇改善加算制度の報酬改定によって、職員の昇給、処遇改善に充てていく割合がじわじわと増え、事業所の内部留保相当分はじわじわと減っていく構造ですが、これに対応するためには、

①良い人材をしっかり処遇し定着させる。

②複数法人にて複数のサービスを運営しリスクに備える。(大手はその必要なし)

といった経営戦略になるのかなと感じます。

日本の政策は基本的には大企業優先ですので、そういった面がモロに出ているようには感じましたが、勘ぐりすぎでしょうか。

処遇改善加算は一本化されますが、それはもらったものを払うときに一本化してよいという意味に過ぎないため、はっきり言って事務負担は増大するように感じます。

できれば保育分野のように、令和6年度からは誓約書だけで良いことにしてもらえると良いのですがね…


※ 「こども家庭庁成育局」ウェブサイトより



医療、介護、障害、保育、生活保護といった分野においては、できうる限り整合性をとって、事務負担についても平等性を確保していただきたいと、いつもそう思っております。

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