企業主導型保育事業の会計における注意点(保育料や連携協定の利用契約料の取扱いなど含む)

平成28年度から始まった企業主導型保育事業の会計については、社会福祉法人会計特有の処理などが複雑かつ難解であると感じ、困っていらっしゃる園もあるかと思います。

認可保育所の場合は運営費の30%ルールや弾力運用など、行政指導のもとで会計報告をしていると思いますが、企業主導型保育事業もこれに似た会計処理が必要です。

しかし似て非なるものと言いますか、全く同じではないのでその点を踏まえて会計処理をしないと予期しないことが起こる可能性もあります。

今のところ企業主導型保育事業には弾力運用の制度は無いのかなと思うのですが、個人的に注意点として考えられる点は次のとおりです。

① 助成金収入より支出が少ない場合は返還する必要があること。

② ①のように収支が出た場合に積立金を計上すればその積立分は返還する必要はないが、積立目的を明確にして積立金を管理する必要があること。(とにかく全額積立にするというより、目的を明確にして安定経営に資するための積立としなければならないこと。)

③ 保護者から徴収する保育料や連携協定を結ぶ企業から受領する契約料金は本部への繰り入れが可能であること。(本部への繰り入れという意味が難しいかもしれませんが。)

④ 助成金収入は他の会計に繰り出してはいけないこと。(本業の通帳に振り替えて保育園以外の経費に勝手に使ってはいけないという意味です。助成金の不正使用になってしまいます。)

⑤ 整備費申請時に設備借入金を調達した場合は、借入金返還支出が発生するがこれを普通に計上できてしまう様子であること。(認可保育所は弾力運用の範囲内でしか返済できませんし、そもそも整備時の自己資金は借入金を充てるにしても限界があります。)

⑥ 本部から繰り入れた場合、収支が出てしまうので余剰に繰り入れすると決算報告時に困ること。(繰り入れというより短期借入(サービス区分間借入や拠点区分間借入など)として処理したほうが良いとは思いますが、繰入と借入の適正な会計処理をしなければなりません。)

⑦ 法人税等について、租税公課として支出に計上してよいのか、また計上する場合は他の事業との按分比率はどのように考えればよいのか。例えば本業が赤字で繰越欠損がある場合など、法人全体では均等割しか発生しないような税引前利益となる場合に、保育園は黒字であるといったケースで法人税相当額は計上できないのか。もっといえば法人は9月決算など3月以外の決算期である場合に、企業主導型保育施設は3月決算をしなければならないので、前期の法人税等を計上するのか、してはいけないのかなど。税務申告とは連動させるべきではないのかもしれませんが、3月末までの収支を4月10日までに報告するのは非常に大変ではないかという点。
(法人税分を計上しないと積立金がその分増えてしまいロックされる金額が増えてしまう。)

概ねこのあたりのことが個人的には気になっております。

確実に通帳は保育園専用の通帳をつくり、場合によっては保育料および連携協定による契約料の通帳もつくり、さらに決算で積立が発生した場合は積立用の通帳もつくるというように、園につき3種類の通帳をつくると一番確実かと思いますが、そうする義務もないため、助成金の管理がぐちゃぐちゃになってしまうような園も出てくるのではないかと不安です。

①から⑦に挙げた事項については、④や⑥については認可保育所の場合も同じことが言えると思いますが、そのほかはこの新しい企業主導型保育事業特有の要素も含んでおり、この事業についての会計指針などは発出されないのかと思うと、なんだか今まで認可保育所の会計を厳格にがんばってきている努力についても、うーんと思ってしまうところも正直あるのではないでしょうか。

助成金以外の自己資金は無しで全額借入によって保育施設を整備することが可能で、その返済も特に制限なく支出できる点や、利益が出た場合に法人税等が発生すると思いますが、これについてはどのように考えればよいのかなど、ルールが無いと処理のしようがない、迷ってしまうという部分もあります。

あくまでも個人の見解ですし今後制度が整備されたりするところもあると思いますが、やっぱり何らかの指針は必要なのではないかと思います。

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