2020年度 完了報告について( 企業主導型保育事業 )

 さて、企業主導型保育事業のお話になりますが、3月初旬に2020年度の年度完了報告の手引きがメールで配信されました。

 今回から、完了報告の根拠となる収支計算資料の添付が求められるようです。

 弊社では、このことと来年度から始まる監査法人による財務監査への対応を見越して、企業主導型保育事業の会計入力サービスを開始しました。

 というところでセールストークはともかく、手引きの内容について考察をしてみました。

 手引きには、運営費の年度報告や処遇改善実績報告のことも書かれていますが、今回は完了報告といいまして、いわゆる会計の収支決算報告のみについて触れていきたいと思います。

 手引きの20ページ以降が該当する部分になりますので、順番に見ていきましょう。


 まず、これは大原則ですが、金額は「消費税込」の金額でご報告しないと損します。

 ただ、最初でつまずくと言いますか、そもそも日々の会計処理を税抜処理で行っている企業が非常に多いため、それを税込の金額に直すのはソフトによっては相当煩雑であり、中には電卓で手打ちというケースもあるかと思います。

 それから、企業の決算期に関係なく、4月から3月の1年間の金額数値を集計する必要があるため、決算期が3月以外の企業にとっては、2年分の決算数値から抜き出して合算するなど、苦痛でしかないと思われます。

 これら2点の理由で、弊社は企業主導型保育事業の会計入力サービスを開始したわけですが、当然ですが、弊社の入力したものは税務申告にはお使いになれません、この企業主導型保育事業の年度完了報告と財務監査対応のためにしか使えません。

 が、それでもご相談が非常に多いため、全国のみなさまが大変お悩みであることは強く感じます。

 それから、よく支出についてご相談を受けるのですが、単純に言えば、

「保育施設の経費はすべて対象。それ以外は対象外。」

 と、原則的に考えたうえで、迷うものについては慎重に検討していくと良いと思います。

 どうしても分けられない経費については、経理規程の細則等を作成して、一定の割合で按分計上するしかない場合もあります。

 上記の資料には、計上できない支出の例が5つほど挙げられております。

・役員報酬 

 使用人兼務役員分は可能ですが、この勘定科目自体が使えないです。

・減価償却費 

 資金収支計算なのでありません(社会福祉法人会計基準については別途ご説明いたしますが、計上できない理由は、社会福祉法人会計基準の資金収支計算だからです。)

・開園前の経費

 整備費事業で完結すべきなので計上できないのですが、分かりづらいかと思います。

 そのため、園児の下駄箱やロッカーは造り付けにするのです。

 開園後にこれらを購入した場合はどうなるのかといった部分については、内容によるので個別にご相談ください。

・本部繰入金

 社会福祉法人会計基準にもこんな名称は正式にはございませんが、たぶんサービス区分間繰入金支出や拠点区分間繰入金支出、事業区分間繰入金支出は計上できないと言いたいのだと思います。 

 そもそも企業主導型保育事業は単年度事業ですので、完了報告では計上する必要がないかとは考えますが、実際の会計上は、ここはなかなか複雑な点です。

 これも対応方法があるのですが、社会福祉法人会計基準をよく研究してから実行しないと難しいです。

・赤字の繰越

 企業主導型保育事業は単年度事業なので繰り越せないです。

 そのため、決算予測が非常に重要であり、弊社が会計入力サービスを開始しようと考えた次第です。


 次のページに進んでいきたいと思います。




本店で一括計上してしまっている経費は、経費按分を行うか、具体的に抜き出して保育園にかかる部分を明記し、計上するかですね。

委託会社へ委託している場合、今までは「業務委託費支出」で一括計上して終わっていた園、委託先の支出内容を把握できる範囲で計上して報告していた園(守秘義務の観点で考えると非常におかしい話なのですが)などがありました。

今後はかっこ書きで明示する?のでしょうかね。

問6の借入金については、非常に重要なことが書かれているのですが、これも社会福祉法人会計基準に則って考えていただかないと、実際の会計方法がまるで分からないのではないかと思います。

借入金は収入計上しなくてよいと書かれていますが、社会福祉法人会計基準から考えますと、短期借入金ならそうなのですが、長期借入金は必ず収入計上し、返済も支出計上します。

運転資金の返済時にかかる支払利息のみ計上可能というルールのようですが、根拠は正直計りかねます。

一方、整備費事業の自己負担分を借入金で賄った場合、なんと元金と利息の両方を運営費の完了報告で計上できるようです。。。

社会福祉法人会計基準で考えると良く分からなくなってきますが、良いと言われているのだから良いのでしょう。

これは令和2年度から、テナント改修の補助は改修支援加算という運営費の加算メニューで補助をされることになったため、それに合わせたのかなとも思いましたが、そもそも新築とテナント改装では補助方法そのものが異なるので、私としては「?」です。

次に進みます。



開園前の経費であっても、運営支援システム導入加算や防犯安全対策強化加算の対象支出については、整備費や改修支援加算と重複しなければ、計上可能のようです。

今までは、AEDや防犯カメラは開園後に購入していないといけませんでしたが、変わったようですね。


また、運営費の返還はみなさま怖いと感じると思いますが、運営費収入と保育料収入など、収入をしっかりと把握して確定し、それに応じた支出を計上して、余剰が出た場合は計画的にしっかりと積立を行えば大丈夫です。

が、難解な部分もあるかなとは思います。

ちょっと長くなってしまったので、続きは別の日に解説いたします。

次回は積立金のお話になります。







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