企業主導型保育事業における労務監査基準について(労務指導監査の開始)
さて、どうやら企業主導型保育事業の労務監査が本格化するようで、一部の園にはすでに監査日時のご連絡が入っているようです。
企業主導型保育事業については、毎年の通例の指導監査のほか、財務監査、労務監査も実施していくこととなり、財務監査と労務監査については、全国どこの園であっても5年の間に1度は行われる見込みのようです。
こうした監査への対応を考える場合には、やはり専門家への依頼も有用で、特に労務監査については、社会保険労務士の先生と相談をしながら取り組むと良いと思います。
本業が多忙でなかなか対応できない場合は、こうした対応も連携推進員ができるとよいですし、そのような人財をいかに確保しておくかが重要です。
正直なところ、社会福祉法人の認可保育所並みかそれ以上の細かさになると予想されますので、これを良い機会と捉えて、企業全体の労務管理レベル、財務管理レベルを上げていくつもりで取り組むのが良いのではないかと思います。
なお、財務については、やはり社会福祉法人会計に詳しい税理士の先生か公認会計士の先生にお願いをすると良いです。
さて、今日は労務監査のことなのですが、まずは労務監査基準を一通りチェックをしまして、特に漏れが多いところを重点的に触れていきたいと思います。
1 就業規則
企業全体で同じものを適用しているケースもあるかと思いますが、やはり保育園専用の就業規則を作成・届出しておくと良いと思います。
特に、以下の項目が漏れていることが多いので、チェックをしておくとよいです。
(1)公益通報者保護の規定
(2)正規雇用転換規定
(3)ハラスメント規定(セクハラ、パワハラほか)
あと、これは案外初歩的なことですが、非常勤用の就業規則が無いケースがあります。
これについては、パート、アルバイトにも賞与や退職金を支給しないといけなくなるリスクがあるかと思いますので、別途作成・届出をしておくとよいです。
それから、パート、アルバイトにも処遇改善手当を支給したいといった場合に、非常勤職員の給与については非常勤職員就業規則に定めてあって、そこに処遇改善手当のことが書かれていないケースもかなり多いので、処遇改善加算を申請している園については、要注意かなと思います。
2 24協定と36協定
36協定は毎年のことなのでちゃんと届出できている園が多いですが、案外24協定のことをご存じなく、開園してから一度も協定していないケースがあります。
保育園において、職員給料から控除することが多い項目としましては、
(1)給食費
(2)職員駐車場賃料
(3)親睦会費
(4)退職共済掛金
などがありますので、最初は特に控除するものが無いという園であっても、念のため作成しておいたほうがよろしいかと思います。
特に24協定については届出義務がございませんので、まずは職員さまと話し合って協定をしておきましょう。
3 賃金規程(給与規程)
就業規則とは別途賃金規程を定めていることが多いかと思いますが、賃金規程に書かれている手当名称と給与明細の手当名称が合致しない園がかなりあります。
認可保育所ですと、このあたりは結構厳しく指摘を受けますが、企業主導型保育事業では今まであまり指摘されてこなかった部分ではありますので、しっかりと整理をしておくとよいです。
特に処遇改善手当については、処遇改善加算Ⅰを用いたのか、処遇改善加算Ⅱを用いたのか、両方用いたのか、内訳が分かるようにしておく必要があります。
手当名称で分けてしまえば一目瞭然ですが、分けていない場合は、結局は別途管理が必要となり、本人への通知についても、例えば給与辞令などを交付することになってきます。
4 処遇改善加算
処遇改善加算については、計画書がしっかりと職員に周知されていて、本人が処遇改善加算を受け取っているか分かっているか、この点が重要になります。
今後、処遇改善制度については、とにかく本人にしっかり渡っていることが重要で、その点を確認することになると思います。
これは介護保険サービスや障害福祉サービスも同じなのですが、特に保育サービスについては明確に区分することが求められる傾向が強いです。
5 労働時間管理
児童の登園、降園時間が1分単位で記録されているなら、当然に職員の出社時間と退社時間も同じ1分単位で記録すべきであり、保育の人員配置基準の確認において、この点は非常に重要な事項になります。
役員であってもタイムカード等による勤怠管理は必須であり、いつも同じ時間が記録されていると、それは時間管理ができていないのではないかという話になりますので、ここも重要な確認事項になると思われます。
6 有給休暇
有給休暇については、まずは管理簿があって一人ずつの有給の残日数や使用した日数が分かるか確認を受けると思います。
園によっては時間単位の有給取得が可能なことがありますが、時間単位での有給管理をする場合は、「時間単位の年次有給休暇に関する労使協定」が必要になりますので、ご注意ください。
これも良く漏れる事項です。
7 健康診断
やはり雇い入れ時の健康診断が未実施というケースが多いので、注意が必要です。
1年未満の有期雇用なら雇い入れ時の健康診断は不要ということで未実施のケースもありますが、もともと1年以上雇用するつもりだったのではというような話から、結局は全員実施してくださいと指摘を受けることも多いので、義務の有無はあるかもしれませんが、一律で受診をしていただいて揃えるのが望ましいと言えます。
よく忘れますので、弊社がお勧めしている対策といたしましては、例えば入社時の必要書類の中に「健康診断記録」としっかり書いておき、採用時にはちゃんと本人が持ってくるようにルールをつくってしまい、自動的に徴取できるようにするという方法もあるかと思います。
8 労働者名簿
よく、社員一覧表などを持ってきて、労働者名簿ですと提示していることがありますが、厳密にいえばそれは労働者名簿ではありません。
1人1枚のものですので、せっかくなので準備しておきましょう。
厚労省の様式だとこれですが、絶対にこれである必要はなく、記載すべき情報が盛り込まれていれば大丈夫かと思います。
9 賃金台帳
これもよく、1カ月の給与一覧表を提示しているケースが散見されますが、そうではなく、1人1枚のものになります。
雇用関係の助成金申請をしたことがある方ならよくご存じかとは思いますが、普通は給与計算ソフトから簡単に印刷することができます。
ちなみに厚労省様式はこれのようですが、これを使っている企業はあまり見かけたことはありませんね。。
そのほか、定年は何歳か、定年を超えた社員に対してちゃんと法令に則って高齢者雇用確保措置がとれているかといったことも重要かと思います。
たまたま企業主導型保育事業には労務指導監査が入るため、こういったことをまとめてみた訳ですが、これは企業主導型保育事業だから必要という訳でもなく、処遇改善制度を除いてはどんな企業にも当てはまることかなとは思いますので、こうした労務指導監査を良い機会と捉えて、とにかく効率化して適正化してしまうと良いと思います。
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