企業主導型保育施設に対する指導・監査(労務関係) 労務指導監査
さて、令和2年10月下旬から、全国の企業主導型保育園に続々と指導監査が入っております。
昨年度は1年間、通常の指導監査がほぼ実施されませんでしたので、今回は令和3年3月末までに、既存の園にはすべて指導監査に入る予定で指導監査を実施しているので、クリスマスに指導監査というような園もあるようです。
そんな状況のなか、来年1月からは労務についての指導監査も始まります。
労務の指導監査については、令和2年10月13日に開催された第8回点検・評価委員会で議題にあがっていましたので、予定通り実施するのだなという認識でいますが、令和5年度末までにすべての事業者を監査するようです。
財務監査は実施機関を公募しているのに、労務は公募せずに全国社会保険労務士連合会に委託するんですね。
まあ、それで良いかなとは思いますが、全国社会保険労務士連合会の事業計画書や収支予算書を見ていますと、この段階ですでに決まっていたのかなとは思います。
事業計画書や収支予算書は、年度が始まる前の3月には上程しているでしょうね。
事業計画書3ページを見ていただくと、「Ⅳ 行政機関等との連携に関する事業」のところの「3.内閣府との連携に関する事業」という記載があります。
計画の詳細については、11ページの下の方に3行ほどで書かれていますが、ここに労務監査の趣旨は書かれております。
企業主導型保育事業の周知や処遇改善加算についての確認、指導なども含まれているようですね。
収支予算書を見ていくと、4ページの「4.その他の収入」の「3.委託事業繰入金収入」に記載されている 102,000千円 が企業主導型保育事業の監査における受託金額ですかね。
1億200万円ということでしょうか。
違うかもしれませんが、令和元年度予算額は0円で、令和2年度予算額のみ計上されておりますので、なんとなくこれなのかなとは感じます。
いずれにしましても、全国社会保険労務士連合会は年間収入が104億円強の団体のようですので、全体収入から見てみれば、1%に過ぎない金額ではあります。
こういったお話はさておき、実際にどのような監査が行われるのか、確認してみました。
目的としては、点検・評価委員会の資料を見ればしっかり書いてありますが、
① 労務環境の確認
② 処遇改善制度の運用状況の確認
こういったところがメインになるかと思います。
実は昨年度、広島県の6件、山陰・山陽地方や九州の79件の園が、モデル労務監査を受けているようです。
その際の指摘事項としては3つほどありますので、まずはこれらの自己チェックが肝要です。
① 就業規則の内容が保育園に合っていない(本社のものを流用している)
② 処遇改善加算がルール通りに分配されていない
③ 割増賃金の計算が間違っている
①については、保育園専用の就業規則と給与規程を作成しましょう。
就業規則については最新のモデル規則を参考にして、公益通報者保護や正社員への転換規程、ハラスメント防止規程などは必ず含まれているものにしましょう。
給与規程については、処遇改善加算を算定する場合には、細かく具体的に定めましょう。
②については、①の給与規程のとおりにしっかりと明確にして対象職員に分配しましょう。
処遇改善のお知らせや給与辞令という形でもよいので、本人に、
「処遇改善加算Ⅰを使って特別手当を2万円付与します」
など、分かるようにして渡して、給与明細にもちゃんと同じ手当名で表示をして、区分しましょう。
介護や障害の処遇改善加算制度とは異なり、保育はきっちりと区分していることが分かるように示したほうがよいです。
(本当は、介護や障害もそうしたほうがよいですが。)
③については、固定残業代を付与しているケースなどはややこしいかもしれませんが、時間管理と毎月の給与計算をいかに正確に行うか、これにつきますので、給与計算のダブルチェック体制をとりましょう。
正直なところ、これらの3項目について、地元の顧問社労士にすべて委託してしまったほうが楽かもしれませんね。
社労士先生にとってはやりづらい部分がかなりあると思いますが、全国社会保険労務士連合会の意図するところは、こうしたところにもあるのかもしれません。
監査に行って社労士先生同士で話をしていただければ、企業主導型保育事業についての理解も進むと思います。
ただ、それを国からの委託費で行うべきかどうかは私には分かりませんが。
なお、今年度は100施設に労務監査に入るそうです。
対象となりますのは、
①施設の多い上位7都道府県
大阪府、東京都、福岡県、神奈川県、兵庫県、北海道、愛知県
②モデル実施県のうち、施設の多い上位3県
熊本県、岡山県、山口県
に所在する園のうち、過去の指導監査で労務に関する指摘を受けたことがある園だそうです。
つまり、新規の園にはまだ入らないのかなとは思います。
監査項目についても点検・評価委員会の資料に記載されていますので、一度チェックをしてみましょう。
すでに自主点検表などもアップロードされていますので、じっくり確認をしていくとよいです。
処遇改善制度については、弊社にもお問い合わせが非常に多い事項になりますので、処遇改善計画書は必ず作成して掲示するなど周知をしておきましょう。
コメント
コメントを投稿