積立資産の取扱いに関する見直し(企業主導型保育事業)


昨年度末に、企業主導型保育事業の令和8年度以降の変更点が発表されましたが、積立資産に関しては、より詳細なルール変更に関する説明資料が公開されました。

このことにより、毎年多くの積立資産が発生している企業主導型保育園については、さっそくなんらかの対応を迫られる事態に陥っております。

企業主導型保育事業は、あくまでも補助金事業であることから、園ごとに会計を単年度決算し、余ったら積み立てるか返還するかの2択を迫られてきましたが、積立資産に上限の定めがなされることにより、どうしても返還になってしまう企業主導型保育園が、大変悩んでおります。

別の制度になりますが、小規模認可園の場合は自治体から委託を受けている形となり、地域型保育給付になるために剰余金に使途制限がないので、企業主導型保育園と似たような定員の園であっても、制度によって明暗が分かれます。

非常にがんばっていて健全経営をしている企業主導型保育園にとっては、大変モチベーションが下がる話で、地域の保育の受け皿への影響が出る可能性もあるように思います。


さて、企業主導型保育園の積立資産対策については個々の事情で異なりますが、まずは資料を見て制度変更の内容を把握していきたいと思います。


⚫︎令和8年度から積立資産の取扱いを見直します。



積立資産が3項目となりますが、そのためになくなる「保育施設・設備積立資産」について、令和12年度までに使い切らないといけないのか、途中で他の積立資産に変更できるのか不明なため、対策がとれません。


また、累計積立上限額は前年度の助成決定額の30%までとありますが、「助成確定額」ではなく「助成決定額」のようです。

仮に前年度の助成決定額が4,000万円なら、累計の積立金上限額は1,200万円になりますが、たとえば前年度の助成決定額が下がってしまって、何もしていないのに積立資産の累計上限額を上回ってしまったらどうなるのかなど、具体的な取扱いは不明です。

単年度の積立上限額については「当該年度」の助成決定額の5%までとのことで、たとえば当該年度の助成決定額が4,000万円だと200万円までしか積み立てられないため、かなり少ない印象です。


それから、積立資産の項目別の管理は廃止するとありますが、人件費積立資産、修繕積立資産、備品等購入積立資産の3種類の残高は管理せざるを得ないように思いますし、都合よくコロコロ変えられるのかなど、具体的な取扱いが不明です。


⚫︎見直しに関する主なQ&A




猶予期間中に累計上限額以内になるようにしないといけないとのことで、既に累計上限額を超えている園については、令和8年度は1円も積み立てられないことになります。

そのほか、保育施設・設備整備積立資産については、令和8年度開始時点の残高までしか使えず、用途も保育施設・設備整備積立資産で取り崩せるもののみが対象と書いてあり、他の積立資産に振り替えることができるとは一言も書いてありません。

積立累計上限額を超える金額については、「遅くとも令和12年度完了報告時に返還」とありますので、5年間ずっと返還せずに完了報告してもよいのか、これも不明です。


今回、企業主導型保育事業の積立資産に関する問題については以上のとおりで、まだまだ詳細が分からないですが、結局は、なにがなんでも積立資産を返還したくないような園は、人件費を過大に増やしたり、委託に切り替えたり、もう諦めて譲渡したりと、混乱が生じることが予測されます。

その混乱によって保育の受け皿、保育の質に問題が生じるようでは本末転倒ですので、過去の保育事業関連の積立金に関する問題などから学び、適切に対応する必要があると思います。


⚫︎23年度会計検査院資料


個人的には、該当年度の運営費助成金が余ったら返還という理屈はわかりますが、過去に一度積立をした積立資産をあえて返還させるという取扱いについては、ある意味では財産権のことを検証しないといけないのではないかなとは感じます。

財産権はあくまでも個人のものかと思いますが、法人の^_^財産権とは何か、ということもまた、一つ検討の材料にはなるのだろうとは思います。

⚫︎民法における法人の権利 和田真一氏 より参照




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