企業主導型保育事業の専門的財務監査のポイント

2023年中に企業主導型保育事業の指導監査や専門的財務監査、専門的労務監査などはほとんど終了しているのかなと思いますが、これから結果通知が届く園もまだまだ多いかなと思います。

少し気が早いのですが、2023年度に行われた専門的財務監査について、個人的にポイントとなるところや、これから2023年度完了報告の準備をしていくうえで、改めて会計処理に関して確認しておくとよいところなどをまとめてみました。


① 保護者から徴収している代金の種類の確認

 例えばスポーツ振興センターの災害共済掛金、帽子代などを保護者から徴収しているかと思いますが、これらに関連する費用については、必ず確認が必要です。

 例えば帽子代ですが、基本的には差益を得てはいけないかと思いますが、業者への支払時には「消耗品」などで処理をしているかと思います。

 帽子代も毎年値段が変わるので重要事項説明書への記載方法など大変かと思いますが、業者に1個1,000円支払っているなら、保護者からも1,000円を徴収しているかと思います。

 結局のところ、「消耗品 1,000円」として経費処理をしていても、ここから保護者徴収分「1,000円」を差し引く必要が生じますので、「消耗品 0円」となり、年度完了報告においては支出計上しても調整額でマイナスをして、調整後の金額は0円となります。

 同じ要領で、スポーツ振興センターの災害共済掛金についても、保護者負担分をちゃんと徴収している園については、その金額分は差し引くことなります。

 園によっては、保護者から徴収した金額については「預り金」の勘定科目で処理をしていて、共済掛金を支払うときに「保険料」と「預り金」で処理をしていることもあります。


② 職員から徴収している給食費等の処理

 まず「給食費」という勘定科目を作っていない園があるようですが、給食に関する費用は独立した勘定科目で処理をすることをお勧めいたします。園によっては「仕入高」等の原価科目で処理していたり、「消耗品費」で処理していたりするようです。

 別に企業会計上は間違いではないかとは思いますが、企業主導型保育事業の完了報告をする際には、「給食費」はなんらかの勘定科目か補助コード等で、独立して把握したほうがよろしいかと思います。

 消費税率も8%かなとも思いますし、毎年消費税仕入控除税額報告を行うことも考えますと、そのほうが管理しやすいでしょう。

 ちなみに社会福祉法人の場合は、「利用者等外給食費支出」で処理するかなと思います。

 保育士等の職員が園児と一緒に給食を食べていて、その給食費を給料から控除している場合、企業会計ですと「雑収入」で処理するかと思います。

 これも社会福祉法人ですと「利用者等外給食費収入」で処理しているのかなと思います。

 企業主導型保育事業の完了報告では、「給食費」から、「雑収入」として処理した職員の給食費を給料から控除した分はマイナスをして報告する必要があります。

 これも良く忘れて報告をして、専門的財務監査で指摘を受けて返還となるケースが多い項目かと思います。

 ロジックとしましては、企業主導型保育事業の運営費助成金で給食費を支払いますが、職員からもらったお金で払う分もあるだろう、その分は運営費助成金は使っていないのだから、給食費からマイナスしなさい、という意味合いかと思います。

 これは①で書いておりますスポーツ振興センターの災害共済掛金や園児の帽子代も同じです。

 園によっては、保育士等の職員から駐車場代を控除している場合もあるかと思います。

 認可保育所ではよく見かける会計処理、給与計算処理になりますが、企業主導型保育事業の年度完了報告においては、これも調整額にてマイナス処理するよう指摘を受けることがあるかなとは思います。

 ほかには、保育士等の社宅家賃なども、給料から控除している場合は、やはりマイナス対象でしょう。


③ 雑収入のチェック

 基本的には、雑収入の内容はしっかりとチェックしておくと良いです。

 例えばコロナ補助金等、自治体等からの補助金が入金されている場合、この補助金で購入した物品やサービス費用、人件費等は、企業主導型保育事業の完了報告においては調整額にてマイナスすることになります。

 法人決算書の勘定科目内訳明細書を確認すれば、法人の雑収入は一目瞭然ですので、決算書の勘定科目内訳明細書も確認をしておくとよいです。

 なお、労働局関係の助成金については、助成金の種類によって解釈が分かれることがあるようなので、注意をしておくとよいでしょう。


④ 関連会社や親族間との取引

 基本的に関連会社や親族間の取引は控えたほうが無難です。

 こうした相手先と契約をして、支出をする場合には、その金額について、必ず説明ができるようエビデンスを用意しておく必要があります。

 不動産を借りている場合は、お金はかかりますが、不動産鑑定をしておくとよいです。

 そこまでできないという場合は、近隣の同じぐらいの規模、類似する用途の物件の家賃相場が分かる資料を用意しておくとよいです。

 ただ、それでも専門家でない方が用意した資料となると信憑性がどうしても薄くなります。

 お金はかかりますが、不動産鑑定を依頼しておくと、のちのち勉強にもなりますし、M&Aや相続・贈与など、人生においてそうたくさんは経験しないシーンにおいては、不動産鑑定の有用性を強く感じると思いますし、個人的にはお勧めしたいと思います。

 そのほか、業務委託契約等については、ちゃんと毎年相見積もりをとって比較検討しているか等、確認を受けるかと思います。

 厨房業務を外部業者に委託している場合は、1年契約になっているか、毎年相見積もり、あるいはプロポーザル(複数の業者の給食の試食会、試食等をして味でも比較検討すること)を行っているか等、外部との契約については注意が必要です。


⑤ 本部経費

 本業も含めて、同一法人内で複数の事業を経営していて、例えば本社に事務スタッフがいて全員の給与計算をしている、会計入力は本社で行っている等、本社にも企業主導型保育事業の保育園の事務負担がかかっている場合、本社の人件費も要件を満たせば計上できますが、いい加減な計算で完了報告に計上をしていますと、指摘を受けることになります。

 本社スタッフのタイムカードで、保育園の事務をした時間とその他の仕事の時間とが区分して記録されて集計され、その労働時間をもとに人件費を計算しているか、等の確認が必要となります。

 また、税理士、社労士、弁護士、経営コンサルタント等の報酬については、明確に保育園分が区分されているか、契約書等で確認を受けることになります。


企業主導型保育事業の専門的財務監査においては、特に上記の5点がポイントになってくるかなと思います。

年度完了報告の金額数値が、何をもとに入力されているのか、また、その入力のもとになった資料については、何をもとにして集計されているのか、さかのぼって確認をしていくことが重要です。

特に法人決算期が3月以外である場合は、2つの部門別損益計算書を合算して報告しているかと思いますが、その合算に用いた帳票そのものがどれなのか、エクセルで集計、合算しているなら、そのファイルはどのファイルなのか、法人決算が終わった後の総勘定元帳との整合性が取れているか、といったところもポイントになります。

株式会社ですと、毎月発生主義で会計管理できていない場合が多いかなと思いますが、3月以外が決算である法人の場合、決算整理仕訳をしていることによって昨年度の経費が混ざってしまったり、はっきり言って収拾がつかない場合もあります。

企業主導型保育事業の場合、原則として毎月未収、未払計上をして、発生主義で処理するしかなくなってきますが、限界もあるかと思いますので、多少の返還はやむを得ないと思っている園も多いのではないかと思いますが、せっかくですので、予算管理をして、先行管理をし、2023年度完了報告に向けて先を予測をしておくとよろしいかと思います。

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