企業主導型保育事業の会計 年度完了報告(決算)と積立資産

平成31年4月8日付で、企業主導型保育事業を運営している園で、対象となる園には、児童育成協会から以下のような題名の文書が届いております。

「平成30年度運営費年度報告及び完了報告ならびに処遇改善加算の実績報告について」

福祉事業の受文書はどうしてもこのように題名が長くなってしまい、複雑で読み取りづらくなりますが、題名を見ただけでも、

① 年度報告

② 完了報告

③ 処遇改善加算の実績報告

の3種類の事務があることが分かります。

昨年度まではこれを急いで4月末までに完了してボタンを押していたわけですが、平成30年度から報告期限が6月30日に延長され、園のみなさまや会計事務所さんもやっと落ち着いて対応できるようになります。
(毎年度、期限が異なるので注意が必要です。)

が、3月分の月次報告が承認されない限り、年度完了報告の画面にはログインできないようです。

当社のクライアントさまにおかれましては、すでに今までのご経験から、完了報告ができるぐらい収支計算書が仕上がっている園も複数ございます。

そういった園にとっては、早く報告したいんですが。。。

という状況にはなっておりますね。

まあ急いでも得しないのかもしれませんが、交付文書にはさも平成31年4月10日から申請できるような書き方がしてあるので、その下の ※ 以下の文章を読んでいないと「あれ?」ということになります。

①の年度報告については、毎月の月次報告の再確認と、修正がある場合はここで修正するという手続きです。
(2021年度からは、年度完了報告の際に過去の月次報告内容は原則修正できなくなっています。)

②は処遇改善加算を算定している園のみが行う、実績報告になります。

そして、③は会計報告ですので、今日はこの③について、今回の受文書で初めて公開されたルールなどもひも解いて見ていきたいと思います。

平成31年4月8日に公布された児童育成協会の文書を受け取っている方は、その文書の10ページから見ていくと良いです。

(余計なことばかり言って申し訳ないですが、児童育成協会の文書には文書番号がないので、文書管理規程を作成してちゃんと文書番号を付けて文書を交付してほしいですね。
毎回、どの文書か説明しないといけないのはやっぱりおかしいです。)

そして、11ページに非常に重要なことが複数書かれているのですが、お気づきになられたでしょうか??

まず赤字のところなんですが、消費税は普段から税込経理をしていないと、支出を税込額で計上するのが非常に大変な作業になってしまいますね。

特に、この企業主導型保育事業は毎年4月から3月の12カ月を集計して収支決算をしないといけませんので、もし企業さまの決算月が3月以外であって税抜経理をしている企業である場合、期をまたいで集計する際に税抜の金額で合算してしまって損したりしそうです。

企業主導型保育事業については、消費税がかかっている支出については報告義務がありますので、企業さまによっては毎年その分の助成金の返還金額が発生するでしょうし。

税込経理に変更すると、売上も税込になってしまい、決算予測が大幅にぶれてしまうこともあるでしょうし、金融機関等に試算表を提出するときも、毎回税抜き処理をしてから提示しないと税込経理だと売上が多く見えてしまうなど、まあいろいろなことが起きるかと思います。

税込経理への変更は現実的ではないでしょうね。

そして企業主導型保育事業のために決算月を変えるというのも、まあそこまでしないといけませんか?という話ですよね。

正直なところ、企業主導型保育事業のこの完了報告のために決算月を3月に変更されたクライアントさまは複数ございます。


そして同じ11ページの欄外の ※ の2つの文章が非常に重要なのです。

非常に重要なのに ※ なので、しっかりと確認いたしましょう。

一つ目の ※ については、

「収入が支出より少ない場合は「収入」欄に「企業自己負担相当分」を計上し、収支の「合計」を一致させます。」

とありますが、「企業自己負担相当分」ってなんだ?そんな勘定科目は社会福祉法人会計基準にはないんですが、といつも思っております。

「拠点区分間繰入金収入」か「サービス区分間繰入金収入」なのではないかと思うのですが。

というか収支を必ず合わせるということは、流動負債である「1年以内返済予定拠点区分間借入金」で処理して、次年度に返済しようということはできないんでしょうかね。。

まあこうなると勘定科目はなんでも良いのですが、「企業自己負担相当分」って次年度以降に返済はできないのか、という疑問はあります。


そして2つ目の ※ をご存じないかたが結構多くてびっくりするんですが、これも非常に重要なお話です。

「「当期資金収支差額合計」が「助成金収入を除いた収入額」以内に収まっていることを確認してください。」

とあります。

これを理解していないと非常に怖いのですが、当期資金収支差額合計はいわゆる税引き前利益のようなもの(収支計算は減価償却費がないのでイコールではありませんが)でして、これが助成金収入を除いた収入額に収まっておらず、積立もしていない場合は、自動的に請求書が送られてきて余剰になっている分は返還することになります。

分かりやすく言い換えますと、保護者から受領する保育料や連携企業から受領する契約料、預金利息などは、補助金ではありませんので、そもそも返還義務がございません。

本部へ繰り入れても良い類のものかと思います。

ですので、「助成金収入を除いた収入額」に収まっていることを確認してくださいと言っているのです。
(2020年度からは収入欄に保育料収入等助成金以外の収入は計上しないことになり、企業自己負担相当分で調整することになりました。)

逆にいうとこの文章は親切で、わざわざ確認してくださいと書いてあり、超えていると積立しないと返還ですよと教えてくれているんです。

ややこしい話ですが、非常に重要なことだと思われないでしょうか??


そして、平成31年4月8日に公布された児童育成協会の文書を受け取っている方は、その文書の16ページ以降も見てください。

返還金が生じる可能性があることに再度触れられていますが、この文章だけでしっかり分かるでしょうか。

その他、支出科目の留意点など、この文書のおかげでいろいろ分かったこともあります。

人件費については、結構細かく区分して報告しないといけませんので、あらかじめそのように会計処理ができていると楽かと思いますが、2年分の賃金台帳を見て区分する園がほとんどかなとは思います。

常勤保育士は常勤保育士、非常勤保育士は非常勤保育士で集計が必要ですし、連携推進加算を算定している園は、連携推進員のみの給料を報告しないといけません。

これも常勤、非常勤で区分しておく必要があります。
(2020年度からは人件費を細分化して報告する必要がなくなりました。)

賃借料加算を算定している園は、家賃は賃借料でしっかり計上しないといけないです。

社会福祉法人会計基準でいくと、「土地・建物賃借料支出」が正しい勘定科目かと思います。

保険料については、基準を守っている園であれば必ず加入しているはずなので、0円になるわけがない科目ですね。

同じように、健康診断や検便などは実施しているはずなので、保健衛生費支出も0円の園はほとんど無いかと思います。

園児の健康診断費用はこの勘定科目になるかと思いますが、たまに無料で健康診断をしてくれる医療機関と提携している園がありますので。。

珍しいですが。

そのほか、17ページには収入・支出科目の計上について一覧表があるので、これも参考になります。

特に借入金元金償還支出や役員報酬、本社の人件費や会計事務所や弁護士等への報酬など、「△」が表示されているものは条件があるので、注意が必要ですね。

本部繰り入れが「×」になっているので、結局「企業自己負担相当分」という表現になってしまうんですね。

そのほか、17、18ページで初めて積立金についての詳細が書かれており、ようやくルールが示されたように感じました。

ただ、「保育所施設・設備整備積立資産」が新規開業のための資金に使用できないという点が、認可保育所とは大きく異なり、結局この資産科目に積み立てる場合は、現在テナントで運営していて10年以上経過してから近隣に新築したいだとか、屋外遊戯場を整備したいだとか、そういった園しかこの積立はしても無駄になってしまうのかな、と思いました。

事前協議を経て新しい園の自己資金にできると良かったんですがね。。。

財源の問題もあるかと思いますが、そこは仕方ないですね。



以上のとおりでだいぶ長くなってしまいましたが、企業主導型保育事業の会計は、社会福祉法人会計基準をベースにしていてほとんど似てはいるものの、一部に特殊な勘定科目やルールが存在し、社会福祉法人会計基準とまったくイコールではないということは分かりました。

今後も細かいルールがつくられていくのかもしれませんが、どうしても新しい事業ができるとどんどん複雑になりますね。

もともと幼保一元化とか言って幼稚園と保育園を一緒にしていくような方針だった気がするのですが、企業主導型保育事業の登場でさらにラインナップが複雑になってきました。

会計もそれにあわせて良くわからなくなってきているので、日々情報収集に努めたいと思います。

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